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近未来の不文律 (タケ山)
初書きのタケ山^^
なんかオチてない感です

log(08.01.22)
title ; ちりあくた



「あれ?タケじゃん。」
「あ、ちわっす。」

待合室の抹茶色の皮革の椅子の青木の横、山ノ井はそっと腰を下ろした。




 近未来の不文律





「タケって目悪かったっけ?」
「いや、目はいいんですけど角膜炎らしくて」
「うそ、大丈夫?」

角膜炎って何かやばそう。眉を寄せる山ノ井に青木は苦笑した。

「もう治るらしいんで大丈夫です。」
「そっか」

ヤマサンは、暫くの沈黙のあとふいに青木が切り出した言葉に山ノ井はiPodから視線をそらし、青木のほうに向き直る。

「なんで眼科に?」
「あのねー、俺ちょー目悪いのよ。」
「コンタクトですか?」
「うん。」

部活のとき眼鏡じゃ無理だろー、そう言ったあと山ノ井はなんとなく後悔した。野球にとって目はやはり良いにこしたことはなく、先日山ノ井より打順が上だった青木に部活と目の関係の話を持ち出すことで自分がそれを意識してしまうのが嫌だった。そう思っているのは自分だけなのかもしれないが、山ノ井は青木が少し苦手だった。

「……。」
「……」

なんでそこで黙るんだよ、山ノ井は心の中で思った。普段はあまり何も考えなくてもにこにこやっていけるタイプなのは自負していたが、苦手な相手とふたりっきりとかそういうシチュエーションが実はかなり苦手だった。早く順番が回ってこないかなどと周りを見回してみてもまだまだ客は多かった。そういえばこの眼科はこの辺では珍しく休日も開いているのだ。仕方ないといえば仕方ない。何だか居心地の悪い空気の中、また山ノ井は口を開く。

「まだ順番回ってきそうにないねー。」
「ですね。」

会話終わっちゃうじゃん。そんなに俺のことが嫌いなのか。だんだん山ノ井はいらだってきていた。それは普段から気づいてはいる、後輩の野球センスの良さへの嫉妬だとか、自分とは割と正反対な無口に対する居心地の悪さだとか、そういうものから来ていた。いや、来ていると山ノ井は思っていた。

またもや暫く沈黙が続き、もうどうでもいいやと思って何となくいらだちの収まった山ノ井の肩に、こてんと青木の頭が乗った。動揺する間もなく青木の寝息が聞こえる。

「(ああ、眠かったのかな?)」

沈黙の多い会話に理由を見つけて少し山ノ井は安心していた。安心?少しその単語にひっかかりながらも、山ノ井は青木の寝顔をちらりと見てみた。

「(寝顔まで表情かてーし。)」

思わずくすくす笑って肩を揺らしてしまい、青木は目覚めた。

「あ、すんません。」
「タケそんなに眠かったの?」

心なしか青木の目の端の頬のへんが赤いように見えた。青木は自分の脈拍がいつもより少し早いのに気づいた。目を開けた直後に視界に入った、山ノ井の襟の広いTシャツから少しのぞいた鎖骨だとか自分と違ってきめ細かい肌色だとか、人の肌から伝わる独特のむんとした熱を思い出して、頭を振った。

「大丈夫です。」
「なんか顔赤いよ?」

熱でもある?ぴと、と山ノ井は青木の額に手の甲をあてる。瞬間、青木は心臓が止まったかと思った。

「ちょっと熱くない?」
「すいません、」

ガタ、と席を立ち、青木は慌ててトイレへと向かった。

「(?やっぱ風邪かなんかか)」

1人で納得する山ノ井と裏腹に、青木はW.C.の看板の下の扉を閉めるなり、その扉にもたれかかってずるずると床に座り込んでしまった。異常に早い心臓の脈拍、赤い頬、少しくらくらする視界。おさまれおさまれ、と自分に言い聞かせるたびに山ノ井の姿が視界に浮かんで、どうしようもなく動揺するのだった。


end

文(おおふり) comments(0)
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