迷子の妄想、ループループ!
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こどもであることが僕らの砦 (タケ山←本+島準)
 ※戦争パロです
  ばからしいから泣けるんだ の続き
  かなり書き直しました
  血の描写とか苦手な人はご注意
  題 夜風にまたがるニルバーナより




戦場という砂漠にだけは、美しい雨が降った。


 こどもであることが僕らの砦


カキィン、

敵の急襲を受けた第三兵隊の戦線は混迷を極めていた。サーベルを打ちならし青木は敵の脇腹を突いた。

「…っ…」

討ち合いに不慣れな敵の軍勢は容易く倒れていった。サーベルを抜くと吹き出る血は青木の軍服を濡らす。動脈を突いたらしい。震えることすら忘れてしまったその腕はまた新たな敵に斬りかかる。鮮やかともいえる動きだった。

「な…、っ」

敵の肩を斬ったその瞬間、背後から背中に鋭い痛みと衝撃が走った。振り向いて斬りつけるも、冷静さを欠いたその切っ先は相手の急所を狙わない。

「っの野郎!」

断たれた神経のためか麻痺した左腕をぶら下げ右手で応戦するも、敵わない。キィンと斬り結んだ瞬間、サーベルは弾き飛ばされ背後にカランと音を聞いた。

「(やられる…!)」

サーベルを振り上げる敵を下に見やり目を細めた。ちょうどその時、敵の肩の上に遠くに何かが反射する光を見た。瞬間、ばっと足を滑らせ下に位置をとる。

ドォオン!

直後に爆音が響き、熱と砂塵が辺りに渦巻いた。敵がドサリと倒れるのを見届け、青木は顔を上げた。

「…っ…驚かせないで下さい」

砂塵の向こうから現われたのは本山だった。肩に担いだ愛用の狙撃銃レミントンは異常に軽量化されている。山ノ井と同じく独自のルートで手に入れたものだった。

「死んでんじゃねーぞ、タケ」
「…助かりました」

青木は溜め息をつく。青木の斬闘の強さと本山の狙撃の腕前は、隊の中でも群を抜いていた。

「これは貸し、な」

本山は口の片端をにっと上げて笑った。つられて苦笑した青木の目に、本山の背後の敵が映る。刹那、鋭い眼で下から斬りかかった。

ザンッ

勢いよく薙払われた敵の血が、驚いて振り向いた本山の頬を濡らす。

「…今のでチャラ、っすよ」

青木は息を吐きながら言う。この戦場という場所では休む暇など与えられずに敵は襲いかかる。少しでも気をゆるめた瞬間、気付けば死んでいたなど冗談の口端にものぼらない。

「…助かった」

本山も敵に備えるサーベルを腰から抜きながらそう告げる。二人は互いに背中を向けながら、襲いかかる敵に向き合った。

「なぁ…タケっ、」

青木に背を合わせ、敵と激しく斬り結ぶ。サーベルを振り上げ、本山は言う。

「っ…死ぬんじゃねーぞ」

敵の強い太刀筋を受けながら青木はそれを聞いた。激しく斬り結んだ瞬間火花が散る。

「、いきなり何ですか…っ」

キィンと敵の刃を払い、青木は言う。目を細めて、新たな太刀を受ける。サーベルの打ち合う金属音が激しく周囲を包んだ。

「…お前が、」

ギリギリと敵の刃を受ける本山はひゅっと息を呑んだ。

「お前が死んだら…、っ」

ガキィン!と本山は敵の刀を弾き落とし、肩を刺す。

「誰が山ちゃんを守るんだよ」

小さく呻きを上げて倒れた敵を下目に見やった後、本山は青木を流し見た。

「…俺は、」

敵の心臓からサーベルを抜いた後、青木はゆっくりと振り向いた。彼らの周囲一面には、倒れた兵士しか残ってはいなかった。

「俺は、山さんと一緒にいる資格なんてありません」

そう呟く青木を、本山はすぅと目を細めて睨む。辺りの死臭は彼らには届かない。

「何でだ」
「こんなに汚れた手で」

あの人に触れられるとは思わない、そう青木は続ける。俯いたままの青木の背中を、本山は見据えている。軍服についた血は、赤いというよりは黒ずんでいる。

「じゃあ例えば、」

本山が口を開く。青木は背を向けたままで聞いている。

「俺が山ちゃんを貰うっていったら?」

青木は振り返り、鋭い眼光で本山を見た。本山の顔は、時折見せる真剣なものだった。

「俺はさ、…山ちゃんが好きだった。」

青木をじっと見据えながら本山はぽつりと言葉を紡ぐ。

「ずっと、山ちゃんしか見えてなかった。」

山ちゃんがお前と付き合いだしてからも、と本山は続けた。青木は俯きながらそれを聞く。遠くに響いていた爆音が小さくなるのが聞こえた。

「だから、分かるんだ。」

そう言って本山は小さく息を吸った。青木は顔をあげた。

「山ちゃんはお前しか見てない」

寂しげに微笑む本山から、青木は目をそらせなかった。死体の中に佇む彼らに、少し温度のある風が吹く。

「お前しか、山ちゃんを守れない。」

本山がそう告げた後、ぽつりと雨が降り始めた。本山の頬の血が溶けて流れ落ちる。

『日本軍全師団に告ぐ、』

ザァアと雑音の混じる音が、軍用連絡の無線から二人の会話を止めた。戦争の終結を伝える機械音と、雨の音だけが辺りを包む。静寂が訪れた。

「…終わった、のか?」

掠れた本山の声は雨に溶けた。青木は口を開く。

「俺、山さんのところに帰ります」

雨は彼らの肩を打ちつづける。提げていたサーベルを、地面に投げた。カランカランと響いた音は雨にかき消されてすぐ消えた。

「ああ」

目を細めて笑う本山に、青木はひとつ尋ねる。

「これって山さんの為、ですか?」
「…山ちゃんのためじゃない。」

雨は青木の頬を濡らし、睫毛を伝った。それは誰かの涙のようにもみえた。

「山ちゃんが選んだお前のためだよ。」

にっと笑った本山に青木は軽く頭を下げた。走って行く青木の姿は、やがて雨に消えた。

文(おおふり) comments(0)
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