迷子の妄想、ループループ!
<< こどもであることが僕らの砦 (タケ山←本+島準) main あとがき >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています



- -
この手は何を望んだろう (タケ山←本+島準)
 ※戦争パロです
  こどもであることが僕らの砦 の続き
  ようやく完結しました!
  題 夜風にまたがるニルバーナより




春風が舞うのは、この地だけ。



 こ の 手 は 何 を ん だ ろ う



ザァア、と降り止まぬ雨の中、本山は青木を見送った後もそこに立っていた。

「(あいつなら、)」

自分に許されなかった役目も、果たしてくれるだろう。目を閉じれば、睫毛を伝った雨が落ちる。

「(俺っていーやつ)」

そっと自分を慰める言葉を思い、くすりと笑った。雨は染みついた血すら流れ落としてくれる。額にかかる長い前髪を振り払った。

目を開け、雨の匂いを吸い込んだ。

「…俺も、帰るか。」

ぽつりと呟いて、隊の戦友のもとへ歩く。
ふと軍服の胸元を上からまさぐり、かけていたロザリオを手に握った。

「(…神様、)」

目を閉じて、雨に濡れたそれに口づけて祈った。

「(山ちゃんをまだもちろん忘れることなんてできない、でも他人に幸せを譲れるくらいに優しくなれた、大人になれたんだ)」

額にロザリオをかざし、祈った。

「(だから、だからいつの日か山ちゃんを忘れられるくらい、)」

誰かを、愛せますように。



日本では冬の寒さが残る中、春風が時折吹く。島崎は、懐かしい家の戸に鍵を差し込んだ。戦争が始まる前、自分が暮らしていたアパートだった。

「(まさか電気止められてねーよな)」

かつてよくここに遊びにきた恋人の姿が目に浮かんだ。あの、足を折ったときの、恐怖に怯える顔は何回も夢に見た。

ギィ、と錆び付いたドアを開けた。古びた空気が島崎の鼻孔を満たす。俺の家の匂いだ、と思った。

「慎吾、さん…?」

不安げな声が薄暗い部屋から聞こえた。島崎は電気をパチリとつけた。

「準、太」

手に握られていた荷物がドサリと落ちる。驚愕に彩られた目は、床にすわり膝に毛布をかけた高瀬を映す。

「なんで…、」

島崎は、膝をついて顔を覗き込んだ。うっすら目に涙を浮かべて、高瀬は口を開く。

「…和さんに、っ…聞きました、」

震えるその体を、島崎は抱き締めた。忘れたくても忘れられなかった温もりが、そこにあった。

「準太…、ごめんな。」
「…ぅ、」

小さく泣き声をあげる高瀬の髪を、島崎の大きい手が撫でた。こんなに愛しい彼を、どうして忘れようなどと思ったのだろう。

「帰ってきたから…」

腕の中の愛しい温度に、島崎は眼を閉じる。目に涙がこみ上げるのを感じた。もう何も言わなくても、分かっていた。

氷解した春の、一陣の風が吹いた気がした。



「くそっ…!」

青木は駐輪場の壁を蹴った。戦地で会えなかった山ノ井を探し続けて、もう丸二日が経つ。

「(あの人があと行きそうな所…)」

隊の宿舎、二人の住むマンション、実家、大学、あらゆる可能性を模索した。島崎にも尋ねたが、タケの所に行ったとだけ告げられた。

「…もしかして」

一つ、思い出の中に色濃く浮かび上がる場所があった。それは二人が多くの時間を過ごした公園だった。直ぐさま、自転車を走らせた。


案の定、山ノ井はそこに居た。ブランコに座り、裸足の足を揺らしながら俯いていた。

「山さん!」

青木の声に、ばっと顔を上げる。驚いたあと、山ノ井は唇をかみしめた。

「タ、ケ」

青木にぼすんと抱き締められた。薄汚れたシャツに、ぎゅうぎゅうと山ノ井はしがみついた。

「あいたかったぁ…!」

久しぶりの温度に青木は苦笑した。目を閉じて柔らかい髪を梳く。

「ずっと、探してました」

青木の言葉は山ノ井の耳にも心地よく響く。頬が押しつけられた首筋に温かいものを感じて青木は目をやる。

「泣いてるんすか?」

小刻みに震える山ノ井の体を優しく青木は包む。

「タケ…すき、すきなんだ…」

山ノ井の目からぼろぼろと涙が溢れた。

「俺はここにいます」

しゃくりあげる黒髪を、青木はぎゅうと抱き締めた。

「おれ、戦場で死んじゃったらどうしようって、ずっと考えてた、」
「うん」

ひっと言葉の合間に小さく嗚咽が聞こえる。

「タケがしんじゃったらどうしよ、とか、さ」
「うん」

そんな山ノ井の頭を撫でながら青木はゆっくり相槌を打つ。

「でも、もう考えれなかった、タケがいなくなるのなんて、」
「うん」

山ノ井の言葉は愛しい温度で耳に溶ける。青木は小さな鼓動を心臓の片側で聴いていた。

「迷惑でも、タケのそばにいたいんだ…」
「山さん」

名前を呼ばれて顔を上げた山ノ井に、一ヵ月ぶりの口付けをした。目を閉じて互いの温度を分けあった。

「俺だって…、」

山ノ井が顔を見ると、青木は辛そうに微笑んでいた。

「…俺が、離れられないんです」

山ノ井は青木の胸に顔を寄せる。もう言葉はいらなかった。長い間、汚れた手で互いを抱きしめ、温度を確かめ合っていた。



どれくらいそうしていただろうか、涙の収まった山ノ井の痩せた肩に手を置き、気付くことがあった。

「山さん、足…」

山ノ井の裸足の足からは血が出ていた。石や砂利などで黒ずんでいる。

「靴どっかに落としちゃったみたいでさ、家の鍵もなくしたし」

行くとこなかったからここ来た、と首を竦めて俯く山ノ井に青木は背中を向ける。

「わ、ちょ」
「帰りましょう」

青木は山の井をおぶると、二人の住むマンションへと足を向ける。裸足の足をゆらしながら山ノ井は目を閉じる。

「…寝ないでくださいよ」
「ねない、よ…」

すでに舌ったらずなその言葉に青木は苦笑をもらす。

「タケぇ…、」
「何ですか?」
「俺が死んだら俺を忘れてね」

瞬間時を止めて青木はその言葉を聞いた。山ノ井はといえば、変わらず穏やかな表情で肩に頬を寄せている。

「山さん…」
「うん?」
「俺は、」

青木は立ち止まり、肩に頬を擦りつけている山ノ井に告げる。

「二人でいれたら、それでいいんです」

青木の言葉は傷口から溶けていく。背中から伝わる温度を、涸れない涙に溶かした。

「あなただけに会えたら、それでいい」

二人でいれること、歩き出せること。そこにもう距離はなかった。



春風に消せない想いを乗せて、戦場の兵士は愛する人を待つ。
ようやく、戦いは終わったのだった。




( e n d ! )


→ あ と が き
文(おおふり) comments(0)
スポンサーサイト


- -
comment

message :


S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< December 2017 >>
! 必読
トップページ からどうぞ。文とかリンクとか全部ここです。
NewEntry
Profile
Category
Archives
Comment
Search
Link

Mobile
qrcode
Sponsored Links