迷子の妄想、ループループ!
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ばからしいから泣けるんだ (タケ山←本+島準)
 ※戦争パロです
  世界と宇宙の綻びの真ん中で の続き
  3部作のつもりが4部作になりそうです。
  題 夜風にまたがるニルバーナより




真っ赤な世界の中で、その場所だけは美しかった。


   ば か ら し い か ら け る ん


「…くそ、キリがねぇっ!」

島崎が吐き捨てた言葉を咀嚼する余裕などなく、山ノ井は敵を撃ち続ける。もちろん遠方の敵の姿など見えていない、それが唯一の救いのようにも思えた。

「慎吾、こっち使え。」

そう言って山ノ井はゴーグルを外し、持っていた小銃を島崎にひょいと投げる。独自に改造されたそれは軍からの支給品ではない。戦線が追い詰められている今、統制など執れていないも同然だった。

「おう」

受け取ったアサルトライフルを構え、また見えない敵を撃ちつづけた。山ノ井は塹壕にもたれながらずるずると座り込んだ。他の隊員はちらりと横目で見るが、誰も注意などしない。自分さえ生き残ることができればいい、そのために皆武器を手に取るのだ。

「山ちゃん、」

先刻よりは反動の少なくなった小銃で遠方を撃ちながら、島崎は山ノ井に声をかけた。山ノ井は頭を塹壕にくっつけ、島崎のほうをゆっくり見上げた。

「死ぬんじゃねーぞ」

山ノ井はゆっくり、頭を下げた。頷いているつもりらしい。

「タケが居るじゃん」
「おれ、は」

気づけば、ぼろぼろと泣き出していた。衝撃音の響く戦場で、そこだけが無音だった。

「タケがすきだけど、この場所だったらしぬかもしれない、どっちも」
「………」

しゃくりあげながら言う山ノ井の言葉を、暫し銃撃を止めて島崎は聞いていた。

「おれがたとえば死んだとして、そしたらタケは自由に生きれる、じゃん」

島崎の目の端から、一つ涙が落ちた。

「いくらおれが幸せでもタケが幸せでなきゃ、やなんだ…」

島崎は塹壕の底にざっと足をおろし、膝を抱える山ノ井の頭を抱いた。どちらも、泣いていた。

「お前は、…っ」
「……」
「タケが、どう思ってるかとか…っ、考えたことあんのか!」

山ノ井が小さく息を呑むのを腕の下で感じた。どちらも、震えていた。

「タケだって、きっと同じこと思ってる…!」

ぐしゃぐしゃの髪の毛に鼻水を垂らしながら、島崎は言った。ゆっくり目を閉じれば、愛しい黒髪の恋人が浮かんだ。爆音が響く塹壕の外に、静寂が響いた。

「……?」

暫し止んだ銃撃の音に、誰も身動き一つ取れなかった。

「…終わった、の?」

静寂の中で心細げに山ノ井は呟く。涸れた砂漠に、一滴、二滴、やがて線になり、雨が降ってきた。皆が武器を投げ抱き合ったのは、それから数分後のことだった。


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